目次
第1章 乾製品 第3節 煮干し品

干しなまこ

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保存方法

常温保存

キーワード

セラミド/サポニン/長崎俵物/中華素材

備考

Hoshi-namako/伝統的加工品

干しなまことは

 干しなまことは、ナマコを煮熟後に乾燥させた加工品であり、中華料理の高級素材として古くから生産されてきた。江戸時代の長崎貿易における清への輸出品として知られる「長崎俵物」の中でも、特に重要な輸出品であった「俵物三品」のひとつに数えられていた(他の2品は干しあわび、ふかひれ)。
(本文末尾のコラム「ナマコで肌美人」もご参照ください。また、「長崎俵物」については、「第1章 第2節 色もの塩干品」のコラムもご参照ください。) 

主な生産地

 ナマコが漁獲される都道府県(北海道・青森・山口ほか)で生産されており、北海道の生産量が最も多い。

原料選択のポイント

 原料として、マナマコ、キンコ、オキナマコなどが用いられる。マナマコは、その色によってクロナマコ、アオナマコ、アカナマコと呼び名が変わり、原料には価格の安いクロナマコや、生鮮として流通しにくい大型のものが優先して用いられる。

加工技術

 内臓を除去し、よく煮熟してから乾燥させた製品である。加熱と乾燥により、食感の向上や保存性が付与される。

製造工程の概略

加工の実際

  • 原料 大きめのナマコの方が肉厚で、歩留りや製品の外観が良い。

  • 蓄養 生簀写真1やタンク内でー昼夜以上蓄養し、ナマコの内臓に入っている砂や泥など内容物を吐き出させる。

  • 内臓除去 腹側を3~4㎝開き、内臓を取り出し洗浄する写真2。内臓は選別洗浄後、「このわた」や「このこ」、「くちこ」などの加工に利用される。

写真1 ナマコを蓄養する生簀(提供:長崎県) 
写真2 内臓除去の様子(提供:長崎県)

  • 煮熟 煮熟と乾燥を2~3回繰り返す(写真3)。煮熟は専用の煮釜を用いて真水または海水で行う。煮熟時間は概ね1~1時間半程度であるが、ナマコの大きさによって変える。温度や時間は加工業者によって異なり、各々の判断で決定される。煮熟中、泡が浮き出るため、都度すくい取る必要がある。また、煮熟中に表皮がはがれると商品価値が下がるため、丁寧に扱う必要がある。
    煮熟中にしばしば起こる問題として、ナマコの皮がめくれあがる「火ぶくれ」とよばれる現象がある。火ぶくれは、ナマコの外側と内側の温度差が原因であるといわれており、急激な温度変化に注意する必要がある。昔は火ぶくれを防止するため、板に細い釘を打ちつけたもので表面をたたき、小さな穴を開けるといった方法が採られることもあったようである。

  • 乾燥 乾燥は、乾燥機もしくは天日で行う(写真4)。1回目の煮熟後は7~8割程度まで乾燥させる。天日乾燥の場合、天候にも左右されるが概ね3週間~1か月程度を要する。
    空気が乾燥していない場合、乾燥に時間がかかり、ナマコが溶け出して不良品となることがある。また、海水で煮熟した場合、ナマコに塩が付着して乾燥しにくくなることがある。乾燥中は手返しを行い、乾燥むらや乾燥台への付着を防ぐ。歩留まりは1~5 %である。
写真3 煮熟の様子(提供:長崎県) 
写真4 乾燥の様子(提供:長崎県)

  • 選別・包装 大きさ、色、傷の付き具合などを確認し、サイズごとに選別を行う。一般的には、ポリ袋に入れてダンボールに箱詰めする(写真5)。汚れがなく、肉厚で大きく、形が整っており、黒色で艶があり、棘が立っているものが良品とされる。(写真6)

写真5 包装された干しなまこ:北海道産
(提供:針尾漁業協同組合)
写真6 干しなまこ(提供:青森県)

加工に用いる機器等

 蓄養のための生簀、煮釜、乾燥機

品質管理のポイント

 乾燥が十分に行われており、常温保管が可能であるが、5 ℃程度の低温保管も行われる。吸湿に注意が必要で、冬の乾燥した時期が製造に適している。

包装および保管方法

 一般的にポリ袋に入れてダンボールに箱詰めし、常温あるいは冷蔵で出荷する。湿気が少ない冷暗所、あるいは冷蔵での保管が望ましい。

調理方法および食べ方

 干しなまこを食べる場合には、「水戻し」が必要となる。一般的な水戻しでは、まず干しなまこを水に24時間程度浸漬した後、30分程度茹で上げる。その後、茹で水に入れたまま室温で放置し、冷却する。約24時間経過したら再度茹で上げ、加熱と冷却を3回程繰り返す。水戻しは非常に時間がかかる処理であり、場合によっては一週間程度かかるという。中国では炭酸カリウムを主成分とする「かん水」を用いて戻すのが一般的である。
 戻したナマコは淡白な味であるため、細切して他の食材と煮込んだり、スープなどの具材にして食されることが多い。

コラム

「ナマコで肌美人」

 昔、干しなまこ加工に従事していた女性たちの間で、ナマコを加工していると肌がツルツルになると評判であった。中には、煮汁を持ち帰り風呂や洗顔に使用した人もいたという。実際に、ナマコには肌トラブルを防ぐといわれるセラミドや、天然の界面活性剤であるサポニンなどが含まれている。長崎県の大村湾漁協では、これに着目して開発された「黒なまこ石鹸」(写真7)が販売されている。
写真7 黒なまこ石鹼(提供元:大村湾漁業協同組合)

参考文献 

・福永俶子.中国の伝統的な乾燥食品の利用とその調理技法.日本調理科学会誌 2006; 39: 1–9.
・福永俶子他.乾燥ナマコ(キンコ)の水戻しによる成分と組織構造の変化.日本調理科学会誌 2002; 35: 357–361.

(著者:長崎県総合水産試験場 石崎 航一郎)