目次
第1章 乾製品 第2節 塩干品

きびなご丸干し

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主原料

保存方法

冷蔵保存

キーワード

阿久根/上干品/一夜干し/串刺し

備考

Kibinago-maruboshi/伝統加工品

きびなご丸干しとは

 きびなご丸干しとは、魚介類の乾製品の一種で、キビナゴを塩漬けした後,乾燥させたものである。イワシ類の丸干しとほぼ同様の加工工程で製造されている。
 原料のキビナゴは内臓を含んだ状態で加工され、また,加工工程に加熱処理がないことから、自己消化を起こさず、品質を保持するために、乾燥度を高めた製品(上干品)が多い。また、ソフトな食感の製品(一夜干し)とする場合は、乾燥時間を短くし、串刺しにして冷凍で流通させる。キビナゴと塩が原材料のほとんどを占める自然食であり、素朴な味わいに根強い人気がある。

主な生産地

 鹿児島県(とくに阿久根市)、和歌山県,高知県,大分県,長崎県,宮崎県

原料選択のポイント

 原料の条件としては、鮮度が良好で内臓に餌の残っていないものが良いとされる。抱卵時期の全長11cm程度のものは脂質が多いため、乾燥時間の短い一夜干し製品に適している。全長5~6㎝程度のものは、乾燥時間の長い上干品に仕向けられる。

使用する副原料

 塩漬は、真水に塩を溶かした塩水を作り行う。
 業者によっては、食塩に代えて醤油を使用するところもある。

加工技術

 塩水等に浸漬することで、調味と脱水作用をもたらす。乾燥には,冷風乾燥機が用いられる。冷風乾燥機を用いることで、脂質の酸化が抑制されるとともに、低温でじっくり乾燥させることから、魚肉の旨みが濃縮される。
 乾燥時間を長くした上干品は、水分活性が低く,微生物の繁殖が抑制されることから、常温での流通も可能となる。近年は、賞味期限を延長させる目的で,冷凍流通が主流となってきた。

製造工程の概略

加工の実際

  • 原料 原料の鮮度が製品の品質を大きく左右するため、加工場近くの漁場で漁獲された原料を用いることが多い写真1。腹切れなどを起こさないように施氷を行うなど鮮度保持が不可欠である。

  • 選別 腹を押して、アキアミ等の餌が出ない原料を選ぶ。腹の色がオレンジ~茶褐色のものは内臓に餌が残っているので避ける。

  • 洗浄 500ℓ程度のタンクに氷と氷を入れ、水道水を掛け流しながら冷水中で原料魚を洗浄する。また、夾雑物があれば取り除く。

  • 塩漬け 漬け込み容器に原料と等量の7~8%の食塩水を用意する。塩漬中の鮮度保持のために、食塩水等の浸漬液は予め10℃程度に冷却したものを用いる。浸漬時間は、魚体の大きさや抱卵の状況により変わるが、概ね1時間程度を基準に調整する。

  • 水切り 浸漬液から魚を取り上げ、水切りを行う。その後、専用の網に適当な間隔で並べる写真2。このときに、魚体の切れたもの等を選別する。選別の終わった網から順番に乾燥台車に載せる。また、串刺にする場合は、水切りした魚体の腹側から背鰭方向に向けて竹串を通す。一般的に竹串1本に7~8尾を刺す。

  • 乾燥 台車ごと乾燥機に入れ乾燥する。乾燥温度は概ね22℃で行う。乾燥時間は一夜干しで1~4時間程度、上干品では1~2昼夜にわたり行う。上干品の水分は22%程度にまで下がり、製品歩留まりは30%程度となる。

  • 選別・梱包 乾燥後、サイズごとに選別を行い、計量してダンボールの箱に詰める。1箱概ね12㎏である。梱包後は-20~-30℃の冷凍後で保管し、注文に応じて出荷する。
写真1 原料のキビナゴ
(提供:鹿児島県水産技術開発センター) 
写真2 網に並べられたキビナゴ丸干し 
(提供:(有)マルフク川畑水産) 

加工に用いる機器等

 魚体洗浄用タンク、塩漬け用容器、乾燥用台車、乾燥網、乾燥機(冷温風)

品質管理のポイント

 吸湿による乾燥戻りやカビなどの発生、脂質の酸化及び異物混入などに注意する。
 品質を保つために生産現場では出荷するまで冷凍保存が一般的となっている。

製品の形態・包装及び保管方法

 生産者の段階では,12㎏のダンボール箱に入れ冷凍保管され,注文に応じて出荷する。
 小売りでは30g~200gのピロー包装や化粧箱入りで販売される写真3

写真3 きびなご丸干し (提供:(有)マルフク川畑水産) 

調理方法および食べ方

 フライパンでキビナゴ表皮に軽く焼き色が付く程度に煎る。レモンやスダチを搾ったり、マヨネーズに醤油・七味唐辛子を加えたものに付けて食べてもおいしい。堅さが気になる場合は、煎ったキビナゴを三杯酢に入れ、一晩おいてマリネ風にすると柔らかく食べやすい。

(著者:鹿児島県水産技術開発センター 保 聖子)