鮒のあらめ巻とは
「鮒のあらめ巻」とは、素焼きにしたフナを海藻のアラメ(荒布)に巻き、醤油、砂糖、酒等で柔らかくなるまで炊き込んだ昆布巻きの一種である。「あらめ巻き」の主たる食文化圏は三重県であり、伊勢志摩ではイワシ、東紀州ではサンマ、北勢ではハゼといった地域の魚が用いられ、正月に欠くことのできない伝統料理である。
(本文末尾のコラム「海津市で食べ継がれる鮒のあらめ巻き」もご参照ください。)
主な生産地
岐阜県(海津市)、愛知県(愛西市)等
生産・消費の動向
河川・池の埋め立て、ブラックバス等の外来魚による食害でフナの資源量が減少し、市販品は養殖魚でのみ製造されている。加えて、近年の温暖化の影響でアラメの不漁による価格高騰も影響し、生産量は減少しつつある。消費は大部分を地元で占めるが、近年では県外へ転出した人からも毎冬注文があり、正月の伝統食品として根強い需要がある。
原料選択のポイント
脂の乗った国産の寒ブナ(1月下旬~2月下旬)が最上品とされている。アラメは伝統的に三重県の鳥羽産が使用されている。
加工技術
他の昆布巻き類と同様、炊き込むことにより魚を柔らかくし、貯蔵性を付与したものである。ただし、素干しアラメは非常に固く、フナも頭ごと使用するため、予め圧力鍋で水炊きし、柔らかくしてから調味する。他方、市販の干しアラメには予め蒸煮処理したものもあり、20分間程水戻しして、魚の切り身や素焼きを巻き、甘辛く調味する場合もある。
製造工程の概略

加工の実際
国産の養殖フナと三重県鳥羽産の干しアラメを用いた製造例を示す。
- 原料 体長10~15cm程度の小型の寒ブナを使用している。アラメは素干し品である。
- 下処理 フナは鱗、内臓等を丁寧に取り除き、よく洗う(一旦、冷凍保存する場合もある)。アラメは湯で戻し、水に一晩以上晒しておく。
- 素焼き フナに金串を打ち、皮が剥がれないように水分を取ってから素焼きにし、冷蔵庫で一晩冷して身を締める(写真1)。
- あらめ巻き 水戻ししたアラメ(写真2)の葉状部2~3枚を用いて二ツ折りにした素焼きのフナを三角に巻き込み、解けない様に爪楊枝を打つ(写真3, 4)。大きいフナは二つに切り分け、同様に巻く。
- 水炊き 圧力鍋で40分間加熱し、火を止めて70分間程度蒸らして柔らかくする。この煮汁は利用せず、捨てる。
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(提供:株式会社かね善)
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(提供:株式会社かね善)
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(提供:株式会社かね善)
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(提供:株式会社かね善)
- 調味 水炊きしたものを鍋に移し、しょうゆ、砂糖を加えて2時間程炊き込む。煮汁とアラメが黒く変色する。
- 冷却 一晩冷まして爪楊枝を抜き取る(写真5)。
- 包装 発泡トレーに3個程度を盛り付けし、ラップで包装する(写真6)。または、包材に製品を入れて真空包装する。
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- 殺菌 眞空包装した製品を、沸騰水中で50分間、ボイル殺菌する。
- 冷却 室温になるまで、放冷する。
- 製品 梱包して出荷する。
加工に用いる機器等
ガスオーブン、圧力鍋、煮釜、真空包装機等
品質管理のポイント
貯蔵性が高くないため、作り置きをしない。また、夜間は火を止めるため、夏季の製造は避ける。
製品の形態
発泡トレーに3個程度を盛り付けし、ラップで包装する(写真6)。また、包材に製品を入れて真空包装し、ボイル殺菌した常温流通品もある。
包装および保管方法
発泡トレー製品は、賞味期限を6日間として、冷蔵流通している。真空包装製品は、賞味期限を180日間として、常温流通している。
調理方法および食べ方
アラメの磯の香りと素焼きにしたフナの香ばしい風味と旨味があり、ごはんのおかずや酒の肴としてそのまま賞味される。(写真6)
コラム
「海津市で食べ継がれる鮒のあらめ巻き」
鮒のあらめ巻きは岐阜県では海津市でのみ食べ継がれているが、これは高須集合輪中(現在の海津市)の南端に位置した金廻輪中が1576年(天正4年)桑名城主により開拓され、1883年(明治16年)まで三重県であったこと、また、会津藩主となる松平容保など名君を多数輩出した美濃国高須藩が置かれ、明治政府による木曽三川分流工事(1887-1912年)以前は伊勢国(桑名, 四日市)、尾張国(熱田,佐屋)などと海上交易の航路があったことの名残りと考えられる。なお、原料の鳥羽産のアラメは、アワビ、サザエなどを育み、古くから伊勢神宮にも献上されてきたが、側葉の分岐が無い(二次側葉を欠く)点でアラメとは異なり、厳密には同属のサガラメ(相良布)に分類されている。
参考文献
・うちの郷土料理. 農林水産省ホームページ.
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/arame_maki_mie.html
(著者:岐阜県食品科学研究所 加島 隆洋)
