さば寿司とは
さば寿司は、マサバの鰓、内臓、骨を取り除き、塩漬け、酢じめしたものを酢飯とともに成型した製品である。
関西方面で広範囲に作られているマサバを用いた押し寿司、1尾丸ごと開いて用いたものまたは、三枚おろしのしめさばの片身を用いた“姿ずし”、しめさばの切り身をのせて箱で型押しする“押し寿司”、塩じめしたサバの切り身に白板昆布を合わせて型押しした“バッテラ”、“さば寿司”など、サバを用いる形態により数種類がある。
ここでは、兵庫県で生産されている“姿ずし”と、大阪府でつくられている“押し寿司”を紹介する。(本文末尾のコラム「さば寿司のルーツを辿る」もご参照ください。)
主な生産地
京都府、大阪府、奈良県など
生産の動向・消費の動向
関西地方を中心に全国的に生産されているが、生産状況の詳細は不明である。
2020年頃からは国産のマサバが不漁傾向で特に700g以上の大サバの入手が困難になっており、国内養殖のマサバを用いることが多くなっている。
ノルウェーから冷凍タイセイヨウサバが輸入されているが減少傾向で、しめさばの加工に適した大型のサバは少なく、従来のさば寿司の生産は頭打ちの状況にある。
かつては祭礼等のご馳走として寿司屋から供されていたが、近年はチルド流通によりスーパー、百貨店、土産物店等での一般消費者向けの通年販売が可能となり、消費が増えている。
原料選択のポイント
国産原料は、主に東シナ海、日本海西部海域および三陸沖で 11月~2月頃に漁獲された700g以上の脂肪の乗ったマサバ(寒サバ)や、養殖マサバを使用する。
生鮮原料を使用する場合はアニサキスなどの寄生虫の有無を目視で確認する必要があるが、冷凍原料を用いる場合は寄生虫のリスクはない。
ノルウェー産のタイセイヨウサバも11月から2月ごろ漁獲されたものが良いが、年中脂が乗っているものが多く、冷凍したものを輸入している。
使用する副原料
米、塩、醸造酢、砂糖、昆布、うま味調味料など。
加工技術
製法は地方ごとに異なっているが、“姿ずし”は、三枚におろし塩漬けしたサバを生酢または調味酢に短時間漬け酢じめしたサバと寿司飯を合わせ、 1~2日間なじませる。
“押しずし”は、酢じめしたサバと酢飯を合わせた後、“押し型”に入れて固め、“白板昆布”を合わせる。
いずれも鮮度の落ちやすいサバに塩を加えることで脱水し水分活性を下げるとともに、酢を加えることでpHを低くし保存性を付与している。
製造工程の概略

加工の実際
- 原料 国産の生鮮マサバ(写真1)もしくはノルウェー産の冷凍タイセイヨウサバ(写真2)を解凍して使用する。
写真①-1024x768.jpg)
写真②-1024x316.jpg)
- 調理・洗浄 頭部、内臓を除き水洗する(写真3)。内臓片、血液、汚物を除き三枚におろし(写真4)、目視で寄生虫(主にアニサキス)を除去する。
写真③-1024x771.jpg)
写真④-1024x768.jpg)
- 塩漬け 切身全体に約10%の塩を振り冷蔵庫で約1日漬込む(写真5)。水で軽く洗い塩抜きし、ふきんで水気をふき取る(写真6)。料理店で出す場合は、塩漬けを1時間程度に抑えるものもある。
写真⑤-1024x769.jpg)
写真⑥-1024x769.jpg)
- 酢じめ 米酢または米酢に砂糖、うま味調味料等を加えた合わせ酢に30分間~2時間、身と皮の表面が少し白くなる程度に漬ける(写真7)。
写真⑦-1024x763.jpg)
- 骨取り、皮むき 包丁で腹骨をすきとり、中骨は頭の付け根に向けて骨抜きで丁寧に抜き取り(写真8)、皮を上に頭の方より尾に向け皮を剥く(写真9)。
写真⑧-1024x502.jpg)
写真⑨-1024x768.jpg)
- 冷凍 国産の生鮮原料を用いた場合、寄生虫(特にアニサキス)の危害を防ぐため、-20℃で一晩以上凍結した後、真空包装して冷凍保存する。
- 成型 “姿ずし”は、酢締めしたサバを解凍し、ふきんの上に身を上にして置き、棒状に固めた寿司飯を乗せてふきんと巻き簾で巻き締め後、サバの皮の上に酢で煮た昆布(白板昆布)を乗せる(写真10~14)。寿司飯は良質の米を硬めに炊き、熱いうちに砂糖、米酢、調味料を合わせ、室温まで冷ましたものを使う。
写真⑩-1024x699.jpg)
写真⑪-1-778x1024.jpg)
写真⑫-1024x772.jpg)
写真⑬-1024x763.jpg)
写真⑭-1024x763.jpg)
大阪のバッテラやさば寿司などの“押しずし”は、押し型に酢締めのサバの皮を下にして置き、その上に酢飯を詰め押し固めて成型する。押し型から取り出した後、サバの皮の上に酢で煮た昆布(白板昆布)を乗せる(写真15~16)。
写真⑮-1024x764.jpg)
写真⑯-1024x742.jpg)
- 熟成 出荷まで温度管理をしながら酢じめしたサバと寿司飯の味をなじませる。
- 製品 スーパーや量販店では発泡トレイに入れてラップ包装して販売することが多い。土産物店では、竹の皮で包装されて販売するものもある。
加工に用いる機器等
巻き簾、箱寿司押し型(写真17~18)
写真⑰-1024x768.jpg)
写真⑱-1024x695.jpg)
品質管理のポイント
原料として脂の乗った寒サバを使用するが、サイズ、漁獲時期、漁獲場所により脂の乗りや味質が異なるため、特に製品に影響するサバの塩漬け、酢じめは原料の状態を見て製造量や配合割合、漬込み時間等を調整する必要がある。
安全衛生管理のポイント
さば寿司は生ものであり、また酢じめのサバと寿司飯の味をなじませる間涼しい場所に保管する工程での二次汚染がないように注意を払う必要がある。
特徴的な成分
さば寿司の栄養成分・保存性関連情報を以下に示した。

健康機能性成分
サバは脂質含量が豊富で、青魚の中でも血栓症や癌の予防、ボケ防止などの効果が期待できるEPAやDHAの含有量が多い。
皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素であるビタミンB2が含まれている。
特に血合い肉にはトリ目やカスミ目などを防ぐ効果のあるビタミンAのほかカルシウムの吸収や骨の形成を助ける栄養素であるビタミンDも豊富に含まれている。
(水産物に含まれる各種成分の効能については、「この図鑑の使い方」末尾の【参考情報】をご参照ください)
製品の形態
写真⑲-1024x682.jpg)
写真⑳-1024x724.jpg)
写真㉑-1024x974.jpg)
写真㉒-1024x750.jpg)
包装および保管方法
包装形態は地方や製品によって異なるが、テイクアウト用の棒ずしや姿ずしは主に竹の皮で包みラップ包装されている。
最近はカットしたさば寿司をトレイパック包装した製品もある。
冷蔵庫(特に0~3℃)に入れると寿司飯が硬くなり過ぎるため、5~10℃の涼しい所に置き、2~3日以内に食べきるようにする。
最近は冷凍技術の発達により、急速凍結した冷凍すしも販売されている。
写真㉓-613x1024.jpg)
調理方法および食べ方
製造後にしめさばと寿司飯がなじむ24時間過ぎが最も美味しいとされるため、一日涼しい所に置
き、切身にして出される。
食べ方としては、そのまま何もつけずに食べるか、少量の山葵と刺身醤油をつけて食べる。
コラム
「さば寿司のルーツを辿る」
古くは若狭街道(通称「鯖街道」)により京都に運ばれた塩さばを用いたとされる“さば棒ずし”、しめさばの切り身をのせて箱で型押しする箱ずしの“バッテラ”や、塩締めしたサバの切り身を酢飯にのせて箱で型押しする“さば寿司”など大阪府特有の箱ずしがある。また、しめさばの切り身をにぎりずし風に柿の葉で巻いた奈良県の“さば柿の葉すし”、背開きのサバ一本に寿司飯を詰めた土佐皿鉢料理の“さば姿ずし”、棒ずしを合わせ酢で煮た昆布を巻いた“松前ずし”などがよく知られている。
参考文献
・古谷治男.さば寿司.「全国水産加工品総覧」(福田裕他編)光琳.2005; 378-381.
・鈴木平光他.魚の種別栄養価.「栄養士さんのための魚の栄養辞典」(大日本水産会編)1996;36
(著者:元兵庫県立農林水産技術総合センター 森 俊郎、元フルヤ食品研究所 古谷 治男)
(取材協力:旬食 井乃上(兵庫県)、難波千日前あばらや(大阪府))
