なまぐさごうことは
新潟県新潟市西蒲区角田浜地区に伝わる伝統的な漬物である。春に角田浜で水揚げされたイワシを塩漬けにして半年以上熟成させた「しょっからいわし」の煮汁に、大根を漬け込んだ保存食である。その風味から「なまぐさごうこ」と呼ばれ、塩分濃度が高いためご飯のおかずとして食される。製品の販売はされておらず、知る人ぞ知る海産魚加工品である。
主な生産地
新潟市西蒲区角田浜地区
生産の動向・消費の動向
現在は角田浜地区の民家数軒で生産され、ほとんどが自家消費(又は近所、親類へ配布)されている。生産者によるが、一度にマイワシ100尾程度を加工する。近年、原料価格の高騰、減塩志向などから、生産者、生産量は減少傾向にある。
原料選択のポイント
イワシは、角田浜地区で獲れた中~大型のマイワシのみを用い、漁獲当日に生鮮の状態で加工する。品質の良さから漁獲時期は5月が望ましいが、近年は不漁のため3~4月漁獲の原料を使用している。
大根は、同地区で収穫された白首大根を用いる。青首大根では硬い食感が生まれない。また、均一に浸漬するために可能な限り太さが同程度のものを使用する。
使用する副原料
食塩、清酒
加工技術
3~5月にかけてイワシの塩蔵を行うことで、腐敗しやすい夏の高温期に至る前に塩の浸透と脱水が進み、夏期には腐敗を抑制しながら乳酸発酵を効率的に進めることができる。
製造工程の概略

加工の実際
- 原料イワシ イワシ原料は刺し網漁業で角田浜に水揚げされた鮮魚のみとし、凍結魚は用いない(写真1, 2)。品質は5月のものが好ましいが、近年は不漁により3~4月のものを使用している。
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(提供:角田地区コミュニティ協議会)
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(提供:角田地区コミュニティ協議会)
- 塩蔵 漬け樽に頭と内臓を除去したイワシと塩を入れよく混ぜ合わせ、密閉する。塩はイワシ100尾に対し1升(1.8リットル) を入れる。20%前後の高塩分下に置くことにより腐敗を防ぎながら原料を発酵させる。
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(提供:角田地区コミュニティ協議会)
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(提供:角田地区コミュニティ協議会)
- 熟成 定期的に攪拌をしながら風通しの良い冷暗所(軒下など)で6~7か月程度静置する。発酵したイワシ(「しょっからいわし」と呼ばれる)と漬汁(魚醤)が得られる。「しょっからいわし」はオーブン等で焼いてご飯のおかずとする消費者も多い。
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(提供:角田地区コミュニティ協議会)
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(提供:角田地区コミュニティ協議会)
- 加熱 「しょっからいわし」を漬汁(熟成により滲出したエキス)、清酒とともに鍋で煮込む。焦げ付かないように注意しながら弱火で2~3日程度煮込む。夜間は火を止め冷暗所に置く。水分が飛び味噌のようにドロドロの性状になったら火を止める(写真7)。
- 原料大根 大根原料は角田浜地区で栽培、収穫された白首大根を用いる(写真8)。白首大根は青首大根に比べて繊維が多く固いことから、なまぐさごうこが好ましい硬さになるため用いられている。
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(提供:角田地区コミュニティ協議会)
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(提供:角田地区コミュニティ協議会)
- 混合 大根が10本程度入る大きさの漬け樽を用意する。大根を2等分にして樽に敷き、上から煮込んだ汁をかける。それを樽が一杯になるまで繰り返す(写真9)。密閉し上から重石を乗せる。
- 熟成 冷暗所で1か月程度静置する。10日に一度内容物を混ぜ、均等な熟成を促す。
- 取り出し 食用にする量だけ大根を取り出し、良く洗う。
- 自家消費 輪切りにしてご飯のおかずとして食べる(写真10)。製品として出荷はされていない。
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(提供:角田地区コミュニティ協議会)
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(提供:角田地区コミュニティ協議会)
品質管理のポイント
2か月以上熟成保存すると酸味が増す。好みの状態で喫食する。
安全衛生管理のポイント
熟成中の雑菌等の混入を防ぐため、原料はポリ袋に入れ漬け樽に格納し密閉する。漬汁から取り出したなまぐさごうこの消費期限は冷蔵で1週間程度である。
包装および保管方法
出荷しないため包装はしない。熟成中は樽に入れたまま冷暗所で静置する。一度取り出した大根については冷蔵庫で1週間程度保管が可能である。
調理方法および食べ方
しょっからいわし(塩蔵後のイワシ)は、オーブン等で加熱して食べる。
なまぐさごうこ(熟成後の大根)は洗浄し、0.5~1cm程度の輪切りにして食べる。
(著者:角田地区コミュニティ協議会 乙山 弘純、新潟県水産海洋研究所 小林 将也)
