ぎんざけ塩蔵品とは
本稿で紹介するギンザケ塩蔵品は、宮城県雄勝湾の養殖ギンザケを天然の粗塩に漬け込み熟成させたサケ塩蔵品である。
宮城県はギンザケ養殖発祥の地であり、宮城県雄勝湾では1975年後半からギンザケ養殖が盛んに行われ、生鮮出荷を主体とした生産が営まれてきた。ギンザケはもともと日本の漁業水域では漁獲されず、国内で流通するギンザケの多くはチリなどから輸入された養殖ギンザケで、その大半は塩ざけなどに加工されて出回っているが、宮城県産の養殖ギンザケのほとんどは付加価値の高い刺身用等の生鮮魚として県内外で流通している。
しかしながら、2011年の東日本大震災により宮城県の漁業は甚大な被害を受け、漁船や養殖関連機器・施設を失った。そのような中、雄勝湾で代々漁業を営む生産者の一人が、震災前よりも一歩も二歩も進んだ漁業に取組むチャンスと決意し、以前のような漁による水揚げだけではなく、加工から流通・販売までを手掛ける6次産業化に挑戦した。
ここでは、宮城県の加工研究機関や様々な復興支援団体、関係者との連携のもと、北洋さけます漁船で行われていた塩漬け加工の方法を応用して開発されたぎんざけ塩蔵品の「夏汐」について紹介する。本製品は雄勝湾の養殖ギンザケを天然の粗塩に漬け込み熟成させた独自の製品であり、2014年には販売が開始され、2018年には月刊誌「料理王国」の「プロが選ぶ食材」として「料理王国100選」に掲載された。
主な生産地
宮城県
生産の動向
宮城県におけるギンザケ養殖は1975年に志津川湾で養殖が行われ、現在では生産量全国1位となっている。2023年の生産量は18,166トン、生産額は126.4億円と重要な養殖種の一つである(図1)。

原料選択のポイント
県内各地の内水面養魚場で育てられたギンザケ稚魚は、秋に海面の生け簀に移され、春から夏(3月中旬から8月上旬)にかけて出荷される。生産者自らが育てた自社養殖ギンザケは水揚げ後、選別生簀において野締め(氷締め)を行い、鮮度、うま味を維持した状態で、加工品の原料として利用される。
加工技術
早朝に自社生簀から水揚げし、選別生簀で野締め(氷締め)されたギンザケを用い、北洋さけます漁船で行われていた塩漬け方法を応用した製法で製造する。すなわち、鰓、内臓および腎臓を除去したセミドレスの状態で天然粗塩(漬込み魚体重に対して4~5倍量)に漬け込み、20℃以下の熟成庫内で、1週間から10日間程度漬け込むことで、ギンザケ肉のうま味を引き出させる。
製造工程の概略

加工の実際
実際の漬け込み作業は、多量の天然粗塩を頭部、腹部および魚体表面の尾部から頭部にかけて軽く擦り込んで塩分の調整を行い、魚体が見えなくなる程の大量の塩を使用し、一尾ずつ層状に積み上げる(写真1)。10~11層に積み上げ、上部に重石を載せて加圧し(写真2)、余分な水分を除きながら漬け込む。これら作業を行うことで、身の締まり具合の良い、ギンザケ特有のうま味がある無添加にこだわった製品を造ることができる。
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(末永九兵衛商店株式会社提供)
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(末永九兵衛商店株式会社提供)
基本、鰓取りや内臓処理、腎臓除去などは手捌きにより行われる。塩漬け完了後の魚体処理では、尾部を手捌きにより除去し、大型魚類裁割機を用いてセンターカット(背骨の中心部分で魚体を裁割するカット法)を行い、頭付きの半身を真空包装し冷凍保存する。「夏汐」は半身製品が主体であるが、注文により切り身や焼きほぐしにも加工される。
品質管理のポイント
「夏汐」は自社の養殖ギンザケ生簀から水揚げ後、選別生簀において野締め(氷締め)を行い、鮮度を保持した上でセミドレスに処理し、うま味を最大限に引き立たせるため、天然の粗塩を用い、保存性の高い漬込みを行っている。
製品の形態・包装等
「夏汐」は、半身商品を主体に切り身の真空パック詰めにした冷凍製品(写真3左)であり、賞味期限は180日間である。
また、半身を利用した焼きほぐし(写真3右)は、瓶詰め殺菌により1年間常温保存が可能である。
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食べ方
天然粗塩に漬け込み熟成させることで、塩辛さに丸みが出てうま味が味わえる。一番の美味しい食べ方は、夏の暑い時期に焼いた「夏汐」をほぐし、ご飯にのせてたっぷりのお湯や水(お茶よりもギンザケの味が良く分かる)を注いで食べれば、さっぱりとした味と程よい脂の乗りが絶妙である。その他には、おこわやおにぎりの具材として、また粕汁などにも利用できる(写真4)。
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(著者:宮城県水産技術総合センター 鈴木 貢治・阿部 真紀子)
(協力:末永九兵衛商店 株式会社 末永 陽市)
