目次
第7章 水産漬け物 第5節 酢漬け

しめさば

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保存方法

冷凍保存

キーワード

酸変性/塩漬け/酢漬け/寄生虫/ヒスタミン/八戸

備考

Shime-saba/伝統的加工品

しめさばとは

 しめさばとは、サバフィレーを塩漬けした後、酢漬けした加工品である。
 しめさばは、関西方面で古くから生産され、食べられてきた調理品であったが、広範囲の流通が目的の加工製品としては歴史が浅い。
 割烹等で作られるしめさば調理品は、酢によるタンパク質の酸変性が魚肉表面に留まることを良しとし、魚肉内部は刺身あるいはなますに近い。一方、しめさば加工製品は長期間の流通に耐える必要があることから、製造工程、包装形態、冷凍処理等を工夫して保存性、流通性を高めている。その結果、酢が魚肉内部まで浸透し、刺身や膾というよりは、なまなれずしに似たものとなる。
 ここでは、広範囲の流通を目的としたしめさば加工製品の製造状況を中心に記述する。

主な生産地

 しめさば加工製品は1968年に初めて八戸市で生産が開始された。その後、全国的に生産されるようになったが、サバの水揚げ基地である青森県八戸市が生産の中心地になってきた。しかし近年では、サバの水揚げ量の減少に伴い、八戸市のしめさば加工業においても原料確保に苦労している。

原料選択のポイント

 しめさばの原料には、マサバ、ゴマサバ、タイセイヨウサバ(ノルウェー産)が使用されている。基本的にはマサバが主流であるが、マサバ資源の減少に伴い、タイセイヨウサバの利用が増加した。
 原料には冷凍品を使用する。これは経済性や製造作業の段取りで有利なばかりでなく、半解凍で処理することにより、魚体処理時の身割れを防ぐことができ、寄生虫の死滅にも効果があるためである。

使用する副原料

 しめさば加工品を製造する際の副原料としては、食塩、醸造酢のほか、調味酢を調製するために上白糖、グルタミン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、ステビア抽出物等を使用する場合がある。これらの使用量については生産工場の方針等により様々である。

加工技術

 塩漬けは、脱水による身締めと同時に塩味付けと保存性の付与を目的とする。次に行う酢漬けは、身締めを進め、うま味、酸味を付けてさらに保存性を向上させる。また、このような塩と酢の相互効果により、適度な食感が付与されるほか、pH低下で酸性プロアテーゼの活性が高まり、遊離アミノ酸が増加することが報告されている。

製造工程の概略

加工の実際

  • 原料 サバは身割れしやすい原料であり、身割れは製品の外観を損なうため、全工程を通して注意を要する。

  • 解凍 半解凍状態は、殺菌海水で調整する。

  • フィレー ほぼ機械処理だが、機械によっては頭・内臓の除去に手作業が必要な場合もある。

  • 塩漬け・酢漬け 数回の手返しを行う。サバは鮮度、大きさ、脂肪含有率等によって塩や酢の浸透に差があるため、ロットによっては試験製造を行い、塩分・酸度・漬込み時間等の条件を決める。

写真1 原料のマサバ(青森食総研提供)
写真2 酢漬けしたフィレ(青森食総研提供) 

  ※青森食総研:青森県産業技術センター食品総合研究所

  • 成形 肋骨(いわゆる腹骨)、ひれ、皮等を除去し、形を整える。これらは製品のチェックを兼ねて手作業で行う。マサバは皮を剥ぐが、タイセイヨウサバは皮が剥がれにくいため、剥皮しない場合が多い。

写真3 骨取り作業(青森食総研提供) 
写真4 皮剥ぎ作業(青森食総研提供)

  • 包装 成形を終えたしめさばは皮側を上にして台紙に乗せ、真空包装する。

  • 選別・異物検査 重量によりサイズ選別し、金属探知機を通して金属が混入していないことを確認する。

  • 凍結 -30℃で凍結し、-20℃以下で保管する。
写真5 しめさばの製品 (株式会社ディメール提供) 

加工に用いる機器等

 ヘッドカッター、真空包装機、フィレー処理装置、選別機、剥皮機、金属探知機

品質管理のポイント

 タイセイヨウサバやゴマサバは身の締まりが悪く、特にタイセイヨウサバは剥皮が困難なうえ、肉中の脂肪含量が多すぎることから、しめさばに加工する場合は注意を要する。

安全衛生管理のポイント

 しめさば製品は品目として食品衛生法上の規格基準がない。保管、流通では冷凍で扱うので食品衛生法の冷凍食品の規格基準の適用を受け、分類上は総菜として取り扱われる。このため、製造工場の許可、一般生菌数105cfu/g以下、大腸菌群陰性が義務付けられる等の厳しい衛生管理が必要となる。さらに、以下に示すヒスタミン食中毒、アニサキス食中毒についても注意が必要である。

ヒスタミン食中毒(アレルギー様食中毒):
サバ等赤身魚の魚肉中に多く含まれる遊離アミノ酸のヒスチジンは、細菌が産生する脱炭素酵素によってヒスタミンに変換される。ヒスタミンはじんま疹等のアレルギーに類似した症状を発症させる。発症した場合は、サバに対する抗原抗体反応(アレルギー)かヒスタミン中毒か、確認する必要がある。後者の場合、製造上の予防方法は、漁獲から製造までの原料の低温管理を行うことでヒスタミン生成菌の増殖を抑えることである。

アニサキス食中毒:
サバにはアニサキス(寄生虫)が生存する場合がある。アニサキスは人の胃壁に窄孔せんこうし、腹痛、胃潰瘍あるいはアレルギー症状の原因になる。アニサキスは-20℃で24時間以上冷凍することで死滅させることができる。しめさばの冷凍流通はアニサキス食中毒の抑制にも寄与する。

健康機能性成分

 サバには他の多くの青魚と同様、DHAやEPA等の高度不飽和脂肪酸が多く含まれる。これは生活習慣病の予防や神経系疾患の予防、肥満抑制に効果があると報告されている。
(水産物に含まれる各種成分の効能については、「この図鑑の使い方」末尾の【参考情報】をご参照ください)

製品の形態・包装・保管方法

 フィレー1枚入りの真空包装が主体である。業務用等に2~7枚入りの真空包装や10~30枚入りの角樽詰め等、需要に応じて対応。近年は少量包装の傾向にある。製品は-20℃以下で保存されている。

調理方法および食べ方

 刺身、押しずし、マリネおよび酢味噌和え等として食されている。

参考文献

・厚生労働省. 「ヒスタミン食中毒について」 
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130677.html :(2025)
・竹内 萌 他.サバに寄生しているアニサキス幼虫の死滅条件.青森食総研報. 2017; 8: 31-41.

(松原技術士事務所 松原 久)