まぐろ類缶詰とは
まぐろ類缶詰とは、マグロ・カツオなどを蒸煮し、その精肉を調味料や油とともに金属製の缶に詰めて真空密封し、加熱調理・殺菌したものである。1928年に静岡県水産試験場の技師が日本ではじめて製造したといわれ、民間では清水(現在の静岡市清水区)で1930年の夏にビンナガを用いて製造が開始された。
ビンナガを原料にした場合は、製品の肉質が淡いピンク色または白色を呈し、ホワイトミートと呼ばれる。キハダやカツオを原料にした場合は、肉の赤色がやや強くライトミートと呼ばれる。
主な生産地
静岡県静岡市清水区、静岡県焼津市が中心
生産の動向
当初は輸出向けが主体であったが、1960代半ばから国内で販売され、1970年台半ばには国内消費が急激に増大した。現在では国内製造品のうち9割以上が静岡県内で製造されている。

国内向けのまぐろ油漬缶詰は、当初ホワイトミート製品によって市場を拡大したが、原料のビンナガの漁獲が減少し、魚価の高騰によって製品価格も上昇したため、魚価が安定していたキハダやカツオなどのライトミート製品の占める割合が高くなった。しかし近年ではキハダやカツオの魚価が高騰し、製品価格に影響を与えている。
調理形態別にみた生産量比率は、油漬が約65%、油入りを含む水煮が約30%、味付が約5%となっている。
近年の傾向として油漬の減少、水煮の大幅な拡大が続いているが、これは消費者の健康志向にメーカーが対応している結果とみられる。

製品の大半を占める油漬について魚種別に内訳をみると、キハダが約50%、カツオが約40%、ビンナガが約10%となっている。魚肉形態別の比率ではソリッドが減少し、フレーク、チャンクの比率が高くなっている。
原料選択のポイント
原料の一般的な漁法は、ビンナガは一本釣りや延縄、キハダ・カツオはまき網によって漁獲される。原料魚は、体表を削ぎ落として精肉だけを製品に用いるため、漁獲時に体表に多少の傷があっても直接的には問題ない。しかし、傷がある魚体は漁獲時の取り扱いにより鮮度が劣ることがあるため、できるだけ傷のない高鮮度のものを選ぶ。
また加工時の作業効率を上げるため、できるだけ大きさの揃った、反りのない原料を用いる。
加工技術
金属製の缶に魚肉、調味液、油などを入れ、缶を真空状態にして密封・加熱することで、調理と同時に殺菌を行い、保存性を高めている。
製造工程の概略

加工の実際
まぐろ類缶詰は大別すると水煮、油漬、味付の3つに分けられる。
いずれも作業工程はほぼ同じであるため、以下に代表的な製造工程を示す。
- 原料解凍 冷凍魚を一晩流水中のタンク内で解凍する。
- 頭、内臓等除去 頭部を切断後、内臓を除去する。
- 蒸煮 腹部を下にしてレトルトクーラーに並べ、クッカーに入れて蒸煮する。蒸煮時間は原料の大きさによって異なるが、およそ180~210分である。魚体中心部の温度が 75℃前後に達する時間を基準にしている。
- 皮、鱗等除去 皮をとり、~体を左右に2つ割にして中骨を除き、さらに背腹(4つ割)に分けた後、ナイフで血合肉、小骨などをきれいに削り取る。基本的に手作業で行われる。
- 詰込・注液、密封 機械により肉詰めを行い、ウェイトチェッカー(自動秤量機)を通して肉詰め不良缶の軽過量を調整後、調味液や植物油などを注入する。油漬は野菜ブロスと植物油を、味付は醤油と砂糖を調合したもの、水煮は油を除いた調味液、または水のみを注入する。その後、真空巻締機で密封を行う。
- 殺菌・冷却 密封した缶を水で洗浄した後、容器のサイズにより殺菌条件は異なるが、概ね115℃、70~90分で加圧加熱殺菌する。
加工に用いる機器等
クッカー、肉詰め機、ウェイトチェッカー(自動秤量機)、油、調味液等注入機、真空巻締機、レトルト殺菌器、洗浄機、蒸気殺菌庫
品質管理のポイント
微生物の増殖を抑えるため低温管理が重要である。
安全衛生管理のポイント
生産工程中では金属探知機を設置し、異物混入をチェックする。また製品中の異物を調べるため、軟X線を用いる場合もある。
健康機能性成分
EPA、DHA、アンセリン等が多く含まれる。
(水産物に含まれる各種成分の効能については、「この図鑑の使い方」末尾の【参考情報】をご参照ください)
製品の形態
マグロ類の缶詰は、大別してソリッド、チャンク、フレークの魚肉形態がある。ソリッドは精肉の塊を詰めたもので主に油漬缶詰で製造される。チャンクはほぐし肉(ーロカット)、フレークは砕肉を詰めたものである。チャンク、フレークは油漬、味付、水煮のすべてで作られている。
缶は、印刷缶の内面塗料缶を使用し、国内向けはラッカー缶、輸出向けはエナメル缶が使用される。最近では、スリーピース缶に代わってツービース缶の比率が高い。また、販売店のまとめ売りの要望に応じ、3~4缶程度ずつにパックしたシュリンクパック包装も増えてきている。
包装および保管方法
金属製の缶が主流であるが、近年レトルトパウチ品が販売されている。缶詰の場合、賞味期間は常温で概ね3年である。余談ではあるが、配合油が魚肉に浸透する製造後3~6ヶ月以降が食べ頃といわれる。
調理方法および食べ方
そのまま醤油、マヨネーズ、ドレッシングなどをかけて食べてもおいしいが、サラダ、サンドイッチの詰め物、コロッケ、ピラフ、和え物などの材料にも広く用いられる。
(著者:静岡県水産・海洋技術研究所 望月 万美子・鈴木 進二)
