かれい塩干しとは
カレイを塩水に短時間漬けてから、干したものである。若狭地方では、18世紀末以来、塩干ししたカレイを「若狭カレイ」と名付けて京都方面へ出荷したり、特産品として好評を博してきた歴史がある。そのほか北海道や山陰地方、九州北部 ・西部でも盛んに生産されてきた。品質が向上してきたのは昭和30年代に温風式、次いで冷風式の魚類乾燥機が開発されてから後のことである。
主な生産地
島根県、兵庫県、鳥取県、北海道
生産の動向
かれい塩干し品の生産量を図1に示した。全国的に生産量は減少しており、平成15年には14,241トンの生産があったが、令和4年には4,395トンまで減少している。島根県が1,772トンと全体の40%を占め、次いで兵庫県が810トン(18%)、北海道の753トン(17%)、鳥取県が407トン(9%)となっている。昭和50年代以降は島根県が最大の生産地となっており、特に浜田地方が有数の生産地となっている。
しかし、令和4年の島根県の生産量は、平成15年の約4分の1にまで落ち込んでおり、減少が著しい。これは、高齢化による生産者の減少に加えて、消費者のライフスタイルの変化も要因の一つとして考えらえる。

(農林水産省統計部「水産加工統計調査」及び漁業センサス(平成25年、30年)データより作成)
原料選択のポイント
原料の選択は、鮮度が良好で傷や腹切れがないことがポイントとなる。島根県では、底びき網漁業によりカレイ類が多く漁獲されるが、漁獲物の船上での保管時間が長い場合が多く、鮮度保持のために速やかな低温管理が重要となる。浜田漁港を根拠とする沖合底びき網漁船は、殺菌冷海水供給装置を導入し、船上での漁獲物の冷却を徹底して、鮮度保持に取り組んでいる。鮮度の良好な原魚を使用することで、塩干し品の味にも違いが生じる。
用いるカレイの種類によっても味が異なる。例として、ムシガレイやソウハチに比べると、ヤナギムシガレイを原魚とした製品はイノシン酸量が多く、旨味に勝る。
使用する副原料
伝統的に塩のみで製造する場合が多いが、ビタミンCなどの酸化防止剤を添加する生産者もある。
加工技術
塩漬けにより魚肉内部に適度な塩分を含ませた後、乾燥させることにより水分活性が下がり保存性が増す。また、乾燥により旨味を濃縮したり、調理時の食感を良くする効果もある。
製造工程の概略

加工の実際
- 原料 生産地によって使用される種類は異なる。基本的な加工方法は種類にかかわらずほぼ同じだが、魚体サイズや時期によって塩漬け液の塩分、塩漬け時間や乾燥時間を調整する。以下が主な生産地と主に扱う魚種である。
北海道:ソウハチ、ヒレグロ
兵庫:ソウハチ、アカガレイ、ヒレグロ
鳥取:アカガレイ、ヤナギムシガレイ、ソウハチ
島根:ムシガレイ、ソウハチ、ヤナギムシガレイ
- 洗浄 原魚を魚洗機に入れ、緩やかに回転させて鱗、ぬめりや汚れを落とす。魚洗機には縦型や横型(写真1、2)があり、浜田地方では横型を使用する場合が多い。また近年、水圧式洗浄機が開発されており、これによって大量の原魚の処理が可能となった。大量生産を行う生産者には、この洗浄機の使用が効率的である。
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- 鰓・内臓・鱗除去 包丁で腹部を割裁し、鰓や内臓を取り除く(写真3)。鱗が残っている場合は、包丁で取り除く。卵を持つ場合は、卵を残すように処理を行い「子持ちかれい」とする。
鱗の除去を主目的として魚洗機を使う場合もあり、その場合は、原魚重量の約60%の砕氷を入れ、水でいっぱいにした後、攪拌棒を緩やかに回転して洗浄・血抜き・除鱗を同時に行う。
この時、攪拌によって魚体が傷ついたり、腹裂けを起こさないように注意が必要である。
- 塩漬け 立て塩漬けの時の塩分は、8~18%に調整し、20分間~1時間の塩漬けを行う(写真4)。塩漬け液の塩分と塩漬け時間は、魚種や原魚のサイズによっても様々であり、製品の味や食感などを考慮して調整する。
改良立塩漬けでは、初めに容器に原魚重量の2~3%の塩を入れ、この食塩が溶けずにわずかに残る程度まで水を入れて食塩水を作り、これに5~8%のふり塩をしながら原魚を漬け込んでいく。このようにすると魚体から浸出してくる水分で最終的には立て塩漬けのようになる。
近年は減塩志向の高まりもあり、塩分を抑えた製品の生産も多くなっている。
なお、酸化防止剤を使用する場合は、この塩漬け時に入れる。
- 塩抜き(水洗い) ざるや籠に塩漬け後のカレイを取り、清水中で洗浄して汚れや魚体表面の塩を取り除く。魚洗機を使用する場合は、緩やかに回転させ、10~30秒程度水洗いを行う。
カレイは、塩抜き後には透き通ったピンク色を呈する(写真5)。
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((有)あけぼの丸FACTORY)
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((有)あけぼの丸FACTORY)
- 串刺し 水洗い後、尾部または頭部(眼)を串刺しにする(写真6)。一般には尾部を刺すことが多く、このようにすれば頭部を下にして乾燥できることから、背びれや腹びれが大きく開いて見栄えがよくなり、腹部に水分が溜まりにくくなる。使用する乾燥機によっては、水平の棚式で乾燥させる場合もあり、この場合は串刺しは必要ない(写真7)。しかし、腹部に水分が溜まる可能性があるので、予め水分を拭き取っておくなどの処理が必要となる。
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- 乾燥 現在のかれい塩干し品生産においては、冷風乾燥が主流となっている(写真8、9)。乾燥温度は18~20℃で、乾燥時間は30分~4時間である。乾燥温度が18℃以下では、乾燥効率が低下するので留意する。
天日干しは、天日と風に当てながら乾燥させる昔ながらの乾燥法である(写真10、11)。今では天日干しを行う生産者は少なくなっているが、この乾燥方法で製造された塩干し品は機械乾燥とは違った味わいがあると言われている。天日乾燥は天候や時期にも影響されるため機械乾燥と併せて行われることも多いが、乾燥時間は大体3~4時間の場合が多い。
温風乾燥機による場合は気温プラス3~5℃で乾燥する。
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- 凍結 乾燥後は速やかに凍結する。現代は、冷凍技術が進歩しており冷凍機器の性能も向上している。通常用いられる送風凍結よりも、さらに凍結速度の速い急速凍結機を用いる場合には、製品を調理したときの食感などが優れているといわれる。
- 真空包装 真空包装が行われることが多い。真空包装にすることで酸化に伴う変色や霜の付着を抑えることができるため、外観が損なわれにくい(写真12)。
- 梱包・出荷 出荷形態としては、段ボール平箱などに入れられ、冷蔵または冷凍で流通される(写真13)。
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((有)あけぼの丸FACTORY)
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((有)あけぼの丸FACTORY)
加工に用いる機器等
魚洗機、乾燥機(冷風)
品質管理のポイント
原魚の鮮度保持及び加工工程中の低温管理が製品の品質に影響する。近年は、消費者の減塩志向を背景として、塩分が控えめで水分が多い製品が多くなっており、長期保管には冷凍が必要となるが、製品の変色や味の変化を抑制するために、とくに温度管理や包装破損には注意が必要である。また、冷蔵流通の場合では微生物の増殖に注意する必要がある。
製品の形態・包装・保管方法
真空包装を行い、平箱段ボールに入れられる場合が多い。真空包装のほかには、ピロー包装や小売店向けには発泡トレイに入れてラッピングして出荷する場合もある。基本的には冷蔵または冷凍保存である。
調理方法および食べ方
ロースター等で焼いて食べる。よく熱した網に冷凍のまま載せて、やや弱火~中火で焼くと身崩れしにくい。フライパンで焼く場合は、温めたフライパンの上にクッキングシートを敷いてから、両面を中火で焼く。
(著者:島根県水産技術センター 石原 成嗣・石橋 泰史)
