目次
第1章 乾製品 第4節 焼き干し

焼きあご

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主生産地

保存方法

常温保存

キーワード

トビウオ幼魚/あご/丸トビ/イノシン酸/出汁/雑煮/平戸/生月/新上五島 

備考

Yaki-ago/伝統的加工品

焼きあごとは

 九州ではトビウオ類は“あご”と呼ばれる。長崎県ではトビウオ類の幼魚は、9~10月上旬、北西の風(あご風)が吹き始めると県北部の平戸島、生月いきつき島沿岸、五島列島北部の上五島有川湾周辺に南下来遊し、二そう船びき網や定置網でまとまって漁獲される。焼きあごはこのように漁獲されたトビウオ類を炭火などで焙焼した後、乾燥させた伝統的な保存食である。

主な生産地

 長崎県平戸島、生月島、新上五島町有川湾沿岸

生産の動向

 漁業者の高齢化に伴う漁獲量の減少により、焼きあごの生産量も減少傾向にある。(地元加工業者からの聞き取りによる。トビウオ漁獲量及び焼きアゴ生産量の統計データはない)

原料選択のポイント

 焼きあごに利用されるトビウオ類は地元で水揚げされた丸トビと呼ばれるホソトビウオ、ホソアオトビが主である。大きさによって用途が異なり、15㎝以上は串焼きして焼きあごにし、これよりも小さいものは網で焼き、主に粉末加工用となる。トビウオは短期間にまとまって漁獲されるため、生鮮原料では水揚げ当日に加工し、加工できない分は凍結保管し、後日利用される。

使用する副原料

 副原料は使用しない。

加工技術

 焙焼により、殺菌とともに酵素の働きを止めうま味成分であるイノシン酸の分解を停止させる。加えて乾燥により水分活性を十分に低下させ保存性を高める。

製造工程の概略

加工の実際

  • 原料 原料は鮮度の良い生鮮または冷凍のトビウオ幼魚を使用する(写真1)。サイズや魚種ごとに選別し、水洗いする。

  • 串刺し 金串を胸鰭むなびれのやや後ろの位置から刺す(写真2)

写真1 加工原料(提供:長崎県総合水産試験場)
写真2 串に刺したあご(提供:長崎県総合水産試験場)

  • 焼き 鉄製の焼き台に炭を入れ(写真3)、近火の強火でまず腹部から5~6分焼く。軽い焦げ目がついたら、串ごと持ち上げ、反転させ1~2分背中を焼く(写真4)。小型の原料は網で挟んで焼く場合もある。

写真3 炭の起こった焼き台(提供:長崎県総合水産試験場)
写真4 炭焼き作業の様子(提供:長崎県総合水産試験場)

  • 放冷 焼き終わったら、串ごと干し網にのせて(写真5)、焼きあごが常温まで冷めたら串から抜き取り、干し網に並べる。

写真5 焼き上がったあごの放冷(提供:長崎県総合水産試験場)

  • 乾燥  あごを並べた干し網を台車に乗せ、乾燥室で乾燥させる(写真6、7)。冷風乾燥の場合、27~28℃で3~4日間、温風の場合で外気よりも12~13℃高い温度で2昼夜、乾燥状態を見ながら台車の位置を入れ替えて行う。粉末にする場合、乾燥は強めに行う。自動的に風向が変わり、台車の入れ替えが不要な乾燥機もある。

写真6 干し網に並べた焼きあご(提供:長崎県総合水産試験場)
写真7 乾燥室内の様子(提供:長崎県総合水産試験場)

加工に用いる機器等

 焼き台、冷風乾燥機、温風乾燥機

品質管理のポイント

 脱酸素剤を入れた袋に焼きあごを密封して、冷暗所に保存する。良く乾燥しているため、常温でも保存性は比較的良い。

製品の形態

 業務用ではダンボール箱に8kg(写真8)、小売では小袋に100g~1kg詰められる。

写真8 箱詰めされた焼きあご(提供:長崎県総合水産試験場)

包装および保管方法 

 ピロー包装し、直射日光、高温多湿を避けて常温保存する。

調理方法および食べ方

 主に碗ものや煮物の出汁に使用する。九州西部では正月の雑煮用に重宝されてきた。それ以外では、ラーメン等の出汁やお菓子の調味などに幅広く利用されている。

参考文献

・榮川省造.「新釈魚名考」青銅企画出版.1982.

(著者:長崎県総合水産試験場 島岡 啓一郎)
(取材協力:株式会社 林水産)