目次
第1章 乾製品 第3節 煮干し品

煮干しいわし

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保存方法

常温保存

キーワード

シラス/カエリ/小羽/中羽/大羽/ビタミンE

備考

Niboshi-iwashi/伝統的加工品

煮干しいわしとは

 煮干しいわしはカタクチイワシ、マイワシ、ウルメイワシなどのイワシ類を原料とした煮干しで、煮干し類の中でも生産量が多い。原料となるイワシ類のうち、カタクチイワシとマイワシは周期的に漁獲量の入れ替わりがあり(卓越種の交替現象)、時期によっていずれかの魚種が最も多く生産される。ここ30年はカタクチイワシが多く獲れており、煮干しいわしの主体となっている。以降、本記事ではカタクチイワシの煮干しを「煮干し」とする。

主な生産地

 長崎県、広島県、熊本県、香川県、千葉県

生産の動向

 全国の煮干しいわしの生産量は、2007年までは概ね3万t以上で推移していたが、2008年以降、3万t以下になり、2022年には1.7万tまで減少している。

図1 全国の煮干しいわし生産量の推移
(引用:水産物流通統計年報 品目別水産加工品生産量累年統計(陸上加工))

原料選択のポイント

 煮干しの品質は原料の良否に大きく左右される。原料の条件としては、鮮度が良好で傷がないこと、脂質含量が少ないこと、内臓に餌を残していないこと、形がそろっていることなどがある。特に、脂質含量の多いものは脂もの(脂タレなど)といわれ、脂質の酸化によって品質が劣化しやすく原料に向かない。煮干し原料はサイズによって呼び名が異なり、小さい順からシラス、カエリ、小羽、中羽、大羽と呼ばれる。なお、基準となる大きさは魚種や地域によって異なり、長崎では表1のとおりである。

表1 長崎県における原料の大きさと煮干しいわしの規格

使用する副原料

 煮熟には海水を使用することが多いが、真水から塩水をつくる場合は塩が必要である。原料の状況に応じて、ビタミンEなどの酸化防止剤が使用される場合がある。

加工技術

 煮熟(加熱)により自己消化酵素の働きを止め、うま味成分のイノシン酸の減少や腹割れなどを防ぐ。また、乾燥により水分活性を低下させることで保存性を付与する。

製造工程の概略

加工の実際

  • 原料 漁獲物は魚槽から加工場にポンプなどで直接運び込まれる。原料であるイワシ類は傷みやすく、原料の鮮度によって腹切れなどが起き、製品の品質を大きく左右するため、漁獲から加工までを短時間で処理すること、鮮度保持のため砕氷などで冷却することが大切である。

  • 選別 ポンプで運び込まれた原料は、選別機により煮干しに向かない大きなサイズが除去される。選別された魚は選別機の下に設置されたオートフィーダーに入る。

  • せいろのせ せいろ(180×90×5㎝)が自動的にオートフィーダー(写真1)の下に送り込まれ、オートフィーダーから一定量(5~7㎏)の原料が落下して、せいろ(煮バラ)の上に自動的に広げられる。原料の載ったせいろはコンベヤ(写真2)に乗って、写真右側に移動する

  • 洗浄 原料が載ったせいろはコンベヤ上を移動しながら上下から噴出した水で洗浄される。20枚のせいろが自動的に積み重ねられると、煮釜のそばまで移動する。
写真1 オートフィーダー
(提供:長崎県総合水産試験場)
写真2 コンベヤ及びせいろを積み重ねる装置
(提供:長崎県総合水産試験場)

  • 煮熟 煮釜(写真3)は約220×220×150cmの角型で、1回で20枚1組のせいろ2組を煮熟できる。煮熟には蒸気で加熱した海水を用いる。海水を用いるのは製品の艶や身のしまりを良くするためで、塩分が少ないと製品に粘りがなく形が崩れやすい。一方で、消費者の減塩志向から真水煮熟の製品も一部ある。煮熟温度は95℃前後が基本で、新鮮な原料ではやや低め、鮮度の落ちたものはやや高めにする。煮熟時間は原料の種類、大きさ、脂質含量などで異なり、カタクチイワシの中小羽では通常5~6分程度で脂質の多いものはやや長めになる。なお、煮熟が足りないと色艶がぼけやすくなる。煮釜の上部に浮上した油分や煮垢は海水の差し水をしながら洗い流す。魚への付着物は釜から揚げるときに真水シャワーで自動的に洗い流される。

  • 乾燥台車のせ 煮熟の終わったせいろは、ホイストクレーン(写真3)で機械(差し機)(写真4)の前まで運ばれ、1枚ずつ自動的に乾燥台車に乗せられて、しばらく放冷される。

写真3 2基の煮釜とホイストクレーン
(提供:長崎県総合水産試験場)
写真4 差し機と乾燥台車
(提供:長崎県総合水産試験場)

  • 乾燥 放冷後、台車ごと乾燥室内(写真5)に入れて乾燥する。室内には壁一面に送風機があり、温度を調整した風が循環するようになっている。乾燥温度は、外気温度から12~13℃高めにする。乾燥時間は魚の大きさで異なり、概ね1~2日間である。カタクチイワシの中羽では約30時間乾燥する。乾燥中に製品に過剰に触れるとかえって品質を落とすため、ばら返し(手返し)は行わない。一方、カエリや小羽ではばら返しを行う。乾燥のばらつきを防止するため、乾燥中に台車の位置を入れ替える作業が行われているが、これに代わり、送風機を移動させて送風方向を自動的に変化させる乾燥機も使用されている。歩留まりは25%程度である。

写真5 乾燥室内の様子
(提供:長崎県総合水産試験場)

  • 選別・梱包 乾燥が終了すると、台車は選別場に移され、せいろごとに目視による選別作業が行われる。選別が終わった煮干しは出荷用のダンボール箱(写真6)に詰められる。1箱あたり8kg入りで梱包後は速やかに共販所などへ出荷する。盛漁期にはダンボール箱の組み立て数量も多くなることから、その手間を省くため製函機(写真7)を導入している業者もいる。
写真6 出荷用段ボール箱
(提供:長崎県総合水産試験場)
写真7 製函機
(提供:長崎県総合水産試験場)

加工に用いる機器等

 選別機、オートフィーダー(写真1)、コンベヤ(写真2)、ホイストクレーン(写真3)、煮釜(ボイラー)(写真3)、乾燥台車(写真4)、差し機(写真4)、乾燥装置(写真5)、製函機(写真7)など多くの機器が利用されている。

品質管理のポイント

 吸湿による乾燥のもどり,カビなどの発生、脂質の酸化や褐変、異物混入などが問題となる。
 包装時には吸湿対策として乾燥材、脂質の劣化対策として脱酸素剤や窒素充填、光を遮断する包装等が行われている。包装までに時間を要する場合、品質劣化対策として-20℃での低温保管が一般的に行われている。異物対策では生産者による目視による選別が行われ、加えて、リパック業者による除じん機や金属探知機の使用、目視選別が行われており、細心の注意が払われている。

製品の形態

 生産者は、専用のダンボール箱(写真6)に入れ、長崎県漁業協同組合連合会が実施する入札会に出品することが多い。リパック業者は、入札等で仕入れた煮干しを除じん機や金属検知機などの機械を使い、目視による選別をして100g~1kg程度の小袋に詰めかえたり、粉末パックや削り節に加工したりして販売する。

包装および保管方法 

 脱酸素剤を封入し、ピロー包装したものが多い。直射日光と高温多湿を避けて常温で保存する。

調理方法および食べ方

 出汁の取り方には水出しと煮出しがある。取り方の一例として、水出しではえぐみが出にくいため煮干し全体を水に入れて冷蔵庫に一晩置き、出汁をとる。煮出しの場合はえぐみが出ないように頭と内臓を取り除いた煮干しを水に入れ、中火にかけ、煮立つ直前に弱火にしてアクをすくい取り約10分間煮る。煮干しが沈んだら、布などでこして使用する。出汁がらには豊富なタンパク質が含まれており、佃煮等で利用される。食感の柔らかいカエリはそのまま食べるいりことして売られていることが多い。

参考文献

・大臣官房統計部生産流通消費統計課消費統計室.「水産加工統計調査」.長期累年統計表一覧; https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/suisan_ryutu/suisan_kakou/index.html(2024年12月17日参照)
・文部科学省.食品成分データベース.魚介類/<魚類>/(いわし類)/かたくちいわし/煮干し.食品成分データベース.(2024年12月17日参照)

(著者:長崎県総合水産試験場 島岡 啓一郎)
(取材協力:九十九島漁業協同組合)