塩あごとは
九州ではトビウオ類は“あご”と呼ばれる。あごの幼魚を原料とした塩干品が塩あごであり、主に出汁素材である焼きあごと異なり、焼いてから身を食べる加工品である。塩あごは、常温でも保存できるようしっかりと乾燥されるため、非常にかたいが、噛めば噛むほどうま味が出てくる。
主な生産地
長崎県(平戸島、生月島、新上五島町有川湾沿岸)
生産の動向
長崎県ではトビウオ類の幼魚は、9~10月上旬、北西の風(あご風)が吹き始めると県北部の生月島や平戸島北部沿岸、五島列島北部の上五島有川湾周辺に南下来遊し、船びき網や定置網でまとまって漁獲される。塩あごの生産量は、漁業者の高齢化による漁獲量の減少に伴い、減少傾向にある(地元加工業者聞き取り)。
塩あごは元々地域の保存食として各家庭で作られていたものであった。これが水産加工品として普及していく中で、 効率的に製造できるよう、立て塩法による塩漬け法や乾燥機械が導入されるようになった。近年は消費者のニーズに対応し乾燥が弱く柔らかい商品も製造されている。
原料選択のポイント
塩あごに利用されるトビウオ類は地元で水揚げされた角トビと呼ばれるツクシトビウオが主である。トビウオは短期間にまとまって漁獲されるため、生鮮原料で加工できないものは凍結保管し、後日解凍して加工される。
使用する副原料
塩
加工技術
塩分調整し易い立て塩漬け(塩水漬け)により塩を添加し、乾燥により水分を調整して水分活性を下げ、常温流通可能な保存性を付与した加工品である。
製造工程の概略

加工の実際
- 原料 原料は生鮮または冷凍のトビウオ幼魚(あご)が使用される。冷凍原料の製品は、生鮮原料の製品よりやや肉質が固いという。
- 選別 魚種、大きさ、傷の有無を目視で選別する。
- 海水洗浄 選別した原料を海水で洗浄する。
- 塩漬け 塩分約16%に調整した塩水を用いる。塩水は数回使用できるが、塩分の管理を十分行う必要がある。
- 清水洗浄 塩漬けした原料を水道水で洗浄する。
- 乾燥 清水洗浄した原料をせいろに広げて(写真1)、乾燥室(写真2)に入れ23~25℃に設定した冷風乾燥機により、中干品では1日半、上干品では3日間乾燥する。
- 包装 脱酸素剤や乾燥剤とともに封入し、包装する。
写真①-1-1024x768.jpg)
(提供:長崎県総合水産試験場)
写真②-1024x767.jpg)
(提供:長崎県総合水産試験場)
加工に用いる機器等
冷風乾燥機
品質管理のポイント
吸湿による乾燥のもどり,カビなどの発生などが問題となるため、包装時に脱酸素剤や乾燥剤が使用される。
製品の形態
200g~2kgでの小型の段ボール箱やポリ袋での袋詰めが多い。
包装および保管方法
脱酸素剤を封入したピロー包装が多い。直射日光や高温多湿を避けて常温で保存する。
調理方法および食べ方
乾燥が弱く柔らかいものは焼いて、乾燥が強くかたいものはさっとあぶり、包丁のみね(包丁の背の根元部分)などで軽く叩いて身をほぐして食べる。骨は身を叩いた際に外れる。ほぐし身をお茶漬けにして食べてもおいしい。
参考文献
・榮川省造.「新釈魚名考」青銅企画出版.1982.
・「日本の食生活全集 長崎」編集委員会代表月川雅夫.「日本の食生活全集42 聞き書 長崎の食事」社団法人農山漁村文化協会.1985.
(著者:長崎県総合水産試験場 島岡 啓一郎)
(取材協力:株式会社 林水産)
